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2003年07月 アーカイブ

2003年07月01日

ビタミンCは葉酸の排泄を高める?



 日本語の健康食品サイトのいくつかで、ビタミンCを1日2グラム以上服用する人は、葉酸がビタミンCと一緒に排泄されてしまうので、普通よりも多めに葉酸を摂取しなければならないと、書かれてあります。


 このことで質問を受けて、文献を捜してみたのですが、どうしても見つかりませんでした。もし事実なら、サプリメント大国のアメリカで葉酸摂取の勧告が作成された時に、一言も触れられていないのが不思議です。変わるけれども有意には変わらないので触れていないだけかもしれないので、文献が見つからない状態では、ただのでたらめなのか誇大広告なのか区別がつきませんでした。


 結局まだ文献は見つけることができないでいるのですが、ひとつだけはっきりしたのは、英語のサイトでは、健康食品の販売サイトを含めて、そんな事実は一切書かれていないということです。


 ということは、恐らく日本か中国か、いずれにせよ、欧米の文化圏とは異なる文化圏での研究成果あるいは伝承によるものということでしょうか。


 まさか、蓚酸を葉酸と見間違えた(あるいは本字、異字と思った)わけではないでしょうが。


2003年07月02日

ダイエットの掟

エビデンス・ステートメント: 体重が減少するかどうかを決めるものは、主として摂取エネルギーの多い少ないである。少ないエネルギーを摂れば、体重は減少する。運動を全くしない場合、減量に最適なエネルギーは三大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)の比にかかわらず、1日当り1,400~1,500キロカロリーである。(カテゴリA)

 フリードマンらの肥満研究第9巻(2001)に掲載された「ポピュラー・ダイエットの科学的総説」(Obes. Res., 9:Suppl.1, 1s-40s (2001))に載っている極めて信憑性の高い(カテゴリA)エビデンスである。

 要するに、食べなければ痩せるし、食べ過ぎれば太るのだ。当たり前だと思うかもしれないが、世に言うダイエット法の多くは、そうではないと主張するかあるいはわざとそれに気付かぬふりをしているようだ。

 ただし、このエビデンスが体重減少のスピードには触れていないことに注意せよ。

2003年07月03日

低脂肪クッキーで炭水化物を過剰摂取?



 脂肪の種類よりも食べる量というニュースが、ユーレカアラートという米国の医科学情報サイトにあったので、最新健康・栄養ニュースでも紹介したのだが、その内容というのが、どうもよくわからない。論文の結論には、表題のような例がいくつか載っていて、だから単に脂肪の摂取量だけを見ていてはだめなのだということのようだ。


 論文自体はショートコミュニケーションで、やっている実験も、イタリアンレストランで、バターの代わりにオリーブオイルを出した場合に、パンの消費量がどう変わるかという単純なものだ。結果は、オリーブオイルだと、パンに塗る量がバターより26%多くなるものの、結局食べる総量が減って、脂質からの摂取エネルギーも総摂取エネルギーもバターの方が多かったというもので、ただオリーブオイルがイリノイ州の人々には合わなかったというだけのようにも見える。


 ところが、著者の意図はそうではなくて、表題のように脂肪を抑えたために、かえって食欲が満たされずに、多くの炭水化物、ひいては多くのエネルギーを摂取してしまった、ということを証明したいようである。それは結論にそう書いてあるのだから間違いないだろう。


 確かに、結論に曰く:オリーブオイル群では、26%多めにパンに塗っているが、食べたパンの量は23%少ない。加えて脂質エネルギー比は36.6%で、バター群の31.0%より高いが、総摂取エネルギーは1106.2Jでバター群の1336.6Jより低い。


 これは、バターの塗り方が少なかったために、食欲が満たされなかったので、多くの炭水化物を摂取してしまったということなのだろうか? 低脂肪クッキーとの対比でいくなら、そういうことなのだろう。オリーブオイル群のほうはオリーブの脂肪で心が満たされたので炭水化物の消費が減ったということらしい。それは食後のインタビューによっても満足したという意見が多く(しかし数は明記されていない)あったことから明らかである。


 しかし、著者は、インタビューの意見の中に、液体なのでうまく塗れないとか、パンを漬けて食べたという意見があったことも記している。だったら、やはり、オリーブオイルをパンに塗ることに慣れない人々が、液体であるために固体のバターより多く塗りがちになり、バターよりおいしくないのでたくさんは食べなかった。ということではないのだろうか。そもそもフルコースを食べた人々の、パンとバターだけの消費量を測定して、どれほど意味があるのだろうか?


 さて、ここまで書いたことは、実はどうでもいいのだ。いろいろ難癖をつけたが、著者の言わんとしていることは理解可能だ(同意できるとは言わないが)。


 私にわからないのは、どうしてこの論文がユーレカアラートにニュースとして載ったのか、ということである。同じ著者のもう一つの論文もユーレカアラートに載っていて、こちらは「幼児期から始まる食べ物の好みの性差」と題されていて、出版された論文ではないようだが、話題としては面白く、したがってニュースになる理由はよくわかるのだが。


 もしかしたら米国では有名な人なのでしょうか? どなたかご存知でしたらお教え下さい。


 教訓をひとつ:少なくともざっと論文に目を通してから最新健康・栄養ニュースに載せるようにすること。特にソースがユーレカアラートあるいはイリノイ大学の場合には(^^;


2003年07月12日

トランス脂肪酸



 米国政府がFDAにトランス脂肪酸の表示を義務化するように指示したのは、2年前のこと(日経ヘルス)だ。


 トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングに含まれている特殊な構造の不飽和脂肪酸のことで、心臓には飽和脂肪酸よりもよくないといわれている。


 今年5月には、大手食品メーカーのKraft(クラフト)がトランス脂肪酸の表示を怠り消費者を危険にさらしたとして訴えられている(BBC)


 そして、やっと、7月9日付けで、FDAはトランス脂肪酸の表示を義務付ける新しい規則を発表した。


 食品メーカーは、2006年1月1日までに完全に実施することを求められているが、これが実行されれれば、年間600−1,200人の冠状動脈疾患と250−500人の死亡を防げるという。数字が妙に具体的なのがいかにもアメリカらしいが…。


2003年07月29日

続・トランス脂肪酸

 日本での表示義務化や含量規制も当然議論に上ってきているだろうが、日本での消費量は欧米に比べると極めて少ない。パン食人種は、毎日3回、1回10グラムものマーガリンを摂り続けている可能性だってあるが(その場合3−10グラムのトランス脂肪酸を摂取している可能性がある)、日本人の場合は朝食だけという人が多いだろうし、マーガリンの使い方が欧米より控えめになるような(これは単なる印象)気がするし、それになによりパン食でない日本人はまだけっこういるわけ(欧米にはほとんどいないだろう、ただしこれも単なる推定)なので、平均の摂取量は欧米に比べてかなり少なくなるのは当然だ。でもパン食大好きの人では欧米並みになる可能性はあるから、気をつけるにこしたことはない。とはいうものの、97年にニューイングランド医学雑誌の論文が出たときにNYTが見出しにしたという、バターイズベターももちろん間違い(飽和脂肪酸も心臓病の危険性を高めるのは間違いない)なので、「オリーブオイルが良い」ということにしておこうか。これは間違いではないと思う。ただし筆者は、まだオリーブオイルでトーストを食べたことはない。

続々・トランス脂肪酸



 ところで、どうでもいいといえばいいことなのだが、グーグルで「トランス脂肪酸」を検索すると、最初に出てくるのが健康食品販売サイトの、あまり科学的とは言いかねるページなのが気にかかる。良いとは言っていないので、そういう意味では悪くないのだが、狂った脂肪酸とか書かれても、化学の知識のある人ならば、シス型とトランス型(舟型と椅子型という日本語もあったような気がするが、これはうろ覚えの知識)は単なる異性体で、片一方を狂っていると断定できること自体狂っている(あるいは全く化学を勉強していない)ことが明白である。トランス脂肪酸は直線的で、シス型の正しい脂肪酸はU字型になっているというのだが、飽和脂肪酸は決して狂っていないと思うが、やはり直線型である。第一、トランス脂肪酸は自然界にも(微量だが)存在するので、そういう意味でも別に狂っているわけではないのである。問題はそれが多量に存在する場合なのだ。発がん物質のように、それが存在するだけで量の多寡以前にもう大問題だという視点がそこにはある。もちろん発がん物質だって量的な問題はあるが、それはおいておくとしても、トランス脂肪酸は決して狂っているから、どんなに少なくてもあってはならないというような存在ではない。飽和脂肪酸同様、たくさん食べると体に良くないというに過ぎない。こういうページを読んだ、化学をまったく知らない人たちが、こういう狂いの生じた記述を、頭から信用することのないようにするための、インターネット上の情報の信頼性確保の方法を検討する必要があると思う(というわけで、Nukeでそれをする計画がある)


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