栄養指導は無駄?
『英国医学雑誌』の5月1日号に掲載された論文(Little P, Kelly J, Barnett J, Dorward M, Margetts B, Warm D: Randomised controlled factorial trial of dietary advice for patients with a single high blood pressure reading in primary care. BMJ 2004;328:1054, doi:10.1136/bmj.38037.435972.EE (published 13 April 2004))によれば、高血圧の要観察期間にあるひとに短期的にライフスタイルを変えるように指導しても無駄だという。
ナトリウムを減らし、カリウムを増やし、野菜、果物、食物繊維を増やし、脂肪を減らすように指導しても血圧は下がらないということらしい。
以下、論文の要約に沿ってみていくと、この研究の目的は高血圧の要観察期間にあるひとに短期的にライフスタイルを変えるように指導することが効果的かどうかを明らかにすることにある。研究デザインは無作為抽出要因試験(ファクトリアル・トライアル)。
方法は、血圧160/90 mm Hg以上の296人の患者を無作為に3つの因子によって規定される8つのグループに分類した。その3つとは、豆知識を与える小冊子群、低ナトリウム高カリウム群、果物野菜食物繊維を多く脂肪を少なく群である。
主要な測定指標は血圧(一次指標)、二次的指標は食事変化、体重、生化学検査(尿中Na、K、カロテノイド濃度)。
結果:血圧は、小冊子群では一ヵ月後に変化なし(0.2; CI 1.6-2.0)。低ナトリウム群(0.13; 1.7 to 2.0)も、果物野菜群(0.52; 1.3 to 2.4)も同様。低ナトリウム群はナトリウムの摂取割合は下げた (difference 0.32; 0.08 to 0.56, P = 0.01)し、果物野菜群は体重を下げた
(1ヶ月ではdifference 0.39 (0.85 to 0.05) kg P = 0.085; 6ヶ月では1.2 (0.1 to 2.25) kg P = 0.03). 果物野菜群はまた果物野菜の消費量を増加させ、カロテノイド濃度もあげた (difference 143 (16 to 269) mmol/l, P < 0.03)にもかかわらず、それは血圧の低下に結びつかなかった。
というわけで、結論としては、短期間にライフスタイルを変えるような介入を行っても、血圧降下には結びつかないということらしい。
でも、2次的な効果はちゃんと見られるので、おそらく脳卒中の予防には効果的であろうということ。
研究はきちんとしたデータの上に積み重ねられるものだ。効果の少ないものを明らかにするためには膨大なデータが必要になる。正直にいうと、私はデータもなく、ゆとり教育だとなんだのという教育学者やある種の役職者が死ぬほど嫌いだが、微妙な変化を雑駁な疫学データで論駁する似非教育学者はもっと嫌い。血圧が変らないのは年単位で議論するべき因子をそんな短期間で測ろうとした研究デザインに問題があるのではないだろうか。
もちろん、研究に予断は禁物だが、だれも、効果のないとわかっている介入研究をするわけないです。それはわかってはいるのですが。