遅まきながら気がついたのだが、科学の研究に携わる者という肩書きの人間である以上、善悪のような道徳的な判断を研究に持ちこんではいけないのに、最近の書き物は間違いっぱなしだった。
ような、気がする。
たとえば、朝食を抜くと、太る、または、やせる。
これはよろしい。でも次のような言い方は絶対的によろしくない。
「朝食を抜くのは良くない」または「朝食を抜くのは身体に悪い」
後者は「身体に」悪いと言っているので、一見価値判断ではなさそうだが、そんなことはない。医者に行って、お酒は身体に悪いからやめなさいといわれたら、そんな非科学的な医者の言うことは(科学的には)信用しないほうがよいわけだ。
なんて、まあ、とりあえず断定的に書いてみたが、こういう判断は実のところ医学の世界ではあまりにも蔓延しすぎていて、それなしにはなんのサジェスチョンももらえないというくらいにフツーの言い方である。
たとえば、15日付のCNNのニュースのタイトルは、"Report links marriage to better health"つまり、結婚は健康に良いと言っている。健康はたしかに価値基準のひとつだから、より良くなったりより悪くなったりするのは当然だが、結婚が健康に良いと言われたら、誰でも結婚が良いことだと無意識に考えてしまうし、実際に記事を書いたライターの念頭にもそれがなかったとは言いきれないと思う。
だが、もう少し厳密な書き方をするならば、この記事は、結婚をしている人の場合、していない人よりも、自分は健康だと思っている割合が高いという調査結果が米国で出されたということに過ぎない。
もし、記事のタイトルが、「既婚者は未婚者より自分を健康と思う」だったら、どうだろう。少なくとも、結婚したほうが良いんだ、と短絡的に思う人の割合は減るだろう。
いや、実際に、例えば平均寿命が違っているという可能性はないとはいえないが、たとえそうであったとしても、それを「良い」「悪い」というのはよくないということに気付いたということなのである。
少なくとも、それは科学的ではないし、多分哲学的でもない。
ような、気がする。のだが。