原稿を書くために文献を調べていたのですが、ギリシャ・ローマ時代の文献に、たったひとつだけだけど、胃と肝臓の治療のためにプロポリスを内服すると書いた文献が存在するらしい。
ただし、現在知られているギリシャ・ローマ全15文献中の1であり、アリストテレスもプリニウスも外用のことしか書いていないので、内服薬としては通常は用いられなかったと判断しても間違いではないだろう。
現代と違って、アルコール抽出などしていない「蜂にかわ」そのものなので、それは要するに松脂のようなものである。プリニウスの時代には間違いなく外敵を寄せ付けない作用を持っているとは考えられていたようだが、多分飲むものではないと考えられていたのではないだろうか?
ニベアクリーム、オロナイン軟膏あるいはムヒがあまり内服には用いられないのと同じ理屈で。
それでも内服について書いた文献が残存してはいるので、実際に飲んだヒトもひとりやふたりではなかったと思う。
アルコール抽出がいつ始まったのかは、結局今回は調べ切れなかった。インカ帝国時代のブラジルなのか(だからブラジル産が良いと言われているのか)? それとも、もっとずっと最近のことなのだろうか? アルコール抽出しても薬効があるとわかったからやったはずなので、どうしてそういう結論に至ったのかは大変興味あるところである。
インターネットでは、そういうことは捜しにくい。基本的にGoogleなど現在の主な検索エンジンは人気投票に過ぎないので、読者が一番騙されやすいサイトが上位に来る。それは人気投票の宿命だ。筆者が記憶している典型的な例は、トランス脂肪酸の危険性に関するサイトで、そこでは脂肪酸の構造図が、まったくでたらめに書かれており、少しでも化学を勉強したものなら、ただちにおかしいことが察知できるが、Googleではトップランキングというものだった。
医学博士も取ったという管理栄養士に見せたところ、なんで問題があるのか、というので、脂肪酸の構造がおかしい(実際はめちゃくちゃ)だろうというと、そうかと答えてから、実は化合物の構造式のことはよくわからないと言われた。
TVなしの生活が多くの人にとって考えられないように、Googleの検索は大きな影響力を持ちつつある。大学の教養課程で化学を学んだ人間には、一見して出鱈目であることがわかるような構造式を載せたページが、Googleのトップか二番手辺りに位置してしまったら、Googleに科学知識の啓蒙を託そうという気持ちが雲散霧消するのは当たり前だ。
ところが、悲しいかな、現実にはそのようなページは依然としてGoogleの上位を飾っている。
筆者はGoogleはランキングをコンピュータにまかせているので仕方ないとずっと思っていたが、最近読んだ本によると、そんなことはないらしい。それが事実かどうかは知らないが、人間が動かしているコンピュータで、理不尽な結果がまかり通っているのを修正できないとしたら、ひどい話である。