相手はだれなのか
エビデンスに基づく医療を行うのが医師以外のものであることは考えにくいが、エビデンスに基づく栄養学を行う主体は明示的に定義されていないのであれば栄養学関係者すべてということになる。実際にするしないではなくて、行うことを想定されている主体という意味で、である。
現実に、EBNの提唱者らが、主体を栄養学関係者すべてと考えているらしいことは、想定された反論に答える形式で書かれた小論から明らかだと思う。同時にこの小論は、関係者を職種別に問答を分けて書いているため、著者が栄養学と個々の職種の関係をどのように考えているのかも示唆してくれる内容となっている点で興味深い。
(反論に対する反論の)著者は、(元)反論の引用をしていない(短いから?)ので、その内容がどのていど現実の反論に基づいているのかは確かめようがない。引用がなければ、著者が仮に医師で栄養疫学者だった場合、医師の反論というものと、基礎動物実験栄養学者や栄養士の反論というものが、全く同じレベルであることはありえないので、小論全体の信頼性は著しく低下する。
例えば(医師でも栄養士でもない)私が、女性の管理栄養士の意見として「彼は男性原理に従って栄養士を医師(通常男性)の下に位置づけて論を組み立てている」という反論があると、ここで紹介するなら、文献を引用しないかぎり、それは私の意見(ということはただちにねつ造を意味する)ということになり、エビデンスは存在しないことになる。「彼は男性原理に従って栄養士を医師の下に位置づけて論じる野郎だ」という男性薬剤師の意見もある、と紹介すれば、私が男性薬剤師であるという事実によって、エビデンスになりうる(でも厳密には出版されなければだめだ)。
もちろん、それは反論の内容そのものとはなんの関係もない。それどころか実際にはひとりの著者によるそれらの(作られたと思しき)反論が、的確に現実を反映している可能性も低くはない。そういうレベルの議論はある。でも、ここではエビデンスに基づくXXXの議論の場であるから、そんな全く実証的でない妄想は問題外なのである。
ちなみに、この著者は、食育といえば英語ではdietary educationであると簡単に断言して、それ以後dietary educationだけを問題にしたりするので、あまり日本語のニュアンスにこだわっても無意味な気がする。おそらく日本語ネイティブではないか、ニュアンスがわかるほどには日本語を理解できないのだろう(というくらい割り切りが良すぎるのだ)。
というわけで、ほんとうの相手はだれなのだろうか? ってマジになってどうする。