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2011年01月 アーカイブ

2011年01月25日

半分の月がのぼる空



伊勢にいったことはなぜか今でもはっきり覚えている。


といっても、覚えているのは、水路だか単なる溝だかを泳いでいた錦鯉だけなのだけど。


幼稚園のころかそれよりも前のことだ。


伊勢神宮にそのころ行ったことは母親に問いただしたことがあるので間違いはない。


同じころ安芸の宮島にも行ったが、こちらは問いただすまでもなく確実に記憶に残っている。だからたぶん宮島のほうが後だったのかもしれないが、どちらも断片的な記憶しかないので判断しようがない。今度実家に帰ったら聞いてみようと思うが、両親のほうがひょっとしたらもう忘れているかもしれないので聞くのがちょっと怖くなる。


思い出しついでに書いておくが、やはりその時期に、父の生家がある山口の宇田郷には、何回か行っており、まだ30代だった父に海に潜ってサザエを採ってきてもらった記憶がある。砂利というには大きめの石(10センチくらいあった)が転がる海岸で、採れたてのサザエを焼いて食べた。そのときは、川で鮎も採った。従兄に目の前でモリでついて採ってもらった。やはりその場で焼いて食べた。


どちらもおいしかったという記憶だけで、実際にどんな味だったかまったく覚えていない。でも江の島へ渡る橋の途中で売っているサザエや、日光で食べた鮎とはまったく違ったと、江の島や日光では思った記憶が確かにある。実際違ったのだろうが、もうまったく再現不可能だ。


実家ではおじさん(父の兄)が養蜂をしていたので生のはちみつを食べたが、これも味に関してはまったく覚えていない。ただ、はちみつはしばらくたつとぼそぼそになって元には戻らなかったらしいことだけは覚えている。おじさんのくれたはちみつはいつもぼそぼそだったから。


いつまでたってもしっとりした市販のはちみつにはなにが添加されているのか今でも興味あるが、きちんと調べたことはない。どうせ調べても、あの生のはちみつがまた食べられるわけではない。それとも山口の実家ではいまでもあのはちみつがあるのだろうか。


『半分の月がのぼる空』は、橋本紡の小説だ。伊勢が舞台だが地域限定の話題はあまり出てこない(続編では出てくる)。言葉も標準語である。わたしは、むかし暮らした大阪と宮崎を思い出しながら読んだが、江の島周辺を舞台にしても問題はなさそうだ。


ファンタジーではないことを言い訳している作者あとがきが現在ではかえって違和感がある。


2011年01月27日

十二月の雨の日




雨に病んだ


乾いた心と


凍てついた空を


街影が縁取る


雨上がりの街に


風がふいに起こる


   松本隆『十二月の雨の日』



おそらく僕はもっと感情をあらわにしたほうがいいのだろう。ときおり、他人のことばにひどく傷つくことがある。そんなときは牙をむき出しにして吠えるのが正解なのではないかと考える。


今日もひどく嫌なことがあった。保険の外交員が電話すると渋谷で電車が止まっているという。待ち合わせの店は営業していない。時間はとっくに過ぎているというのに。


それでよけいに嫌な気分になる。でもそれが嫌なことの正体ではなく。どちらかといえば気分を紛らすお楽しみだ。宮崎にいる彼女。今日は鹿児島空港から来たといっていた。霧島が噴火していた。都城が灰に埋もれていた。空からそれが見えたのだ、と。


待ち合わせの店は閉まっていたので、向かいのベックに入って彼女が切り出したのはそんな話題。保険の「おばさん」の話ではあるのだが、宮崎の話が心地よい。また宮崎に住みたいと思う。


住んだらすぐに他所に行きたいと思うのもわかりきったことだ。だってあそこには本屋がないのだから。でも、それで嫌な気分は少しだけ和らいだ。


嫌なことが本当に嫌なことなのかよくわからないけれども、僕は保険の「おばさん」に会う前に十歳年下の女性と話していた。


彼女はとてもいい人で、だから、そのときはなにかが外れていたのだろう。僕に書評用の本を紹介してほしいと言いった。臨床社会学やカウンセリングの本をもって行くと、紹介したらまた問い合わせが殺到するかも、と言ったので、「紹介できるわけないよね」とまじめに返答したら、「申し訳ないけど、違った」と言って全部返してくれた。


正直にいってはいけなかったらしい。


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