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健康食品 アーカイブ

2003年06月13日

イソフラボンは効かない?

 nutritiongateの記事によると、フィンランドの研究で、乳がん患者の生存者を対象に行なわれた実験の結果、イソフラボンを含む植物エストロゲンサプリメント(栄養補助食品)には、乳がんを患った女性たちの更年期障害を緩和する効果がなかったという。

 ヘルシンキ大といえば、栄養研ともイソフラボンの共同研究を行なっており、今回の論文の共著者の一人が栄養研の石見らと、閉経後の骨粗鬆症予防に効果があるという動物実験の結果の論文を共同執筆している。

 昨年10月28日には、米国ノースカロライナ大学の研究で、若い女性の場合に、イソフラボンは骨粗鬆症の予防に効果がないことが示されている。また、今年の2月にはゲニスタイン(イソフラボンの一種)を妊娠しているネズミに与えると雄胎仔の生殖器官に大きな影響が現れたというBBCの記事があった。まあ、イソフラボンも化学物質なのだから、通常のクスリと同じで作用もあれば副作用もあるだろう。対象によっては効かないことだってあって当たり前ではある。

 しかし、日本では昔から大豆は生活に欠かせない食品であり、少なくとも筆者は、妊婦が食べていけないという話は聞いたことがない。医薬品食品衛生研究所の内分泌攪乱物質Q&Aによれば、日本人は植物性エストロゲンに対して順応しているという説もあるそうだ(下のほう)が、そうなると、欧米人を対象に行なわれた研究は日本人には当てはまらないかもしれないということか。

 まずは、栄養研で現在進行中のヒューマンスタディの結果が注目されるところ、ということだろうか。

ビタミンサプリメント解説を追加

 雑誌臨床検査第45巻(2001)に掲載された斎藤衛郎食品機能研究部長のビタミンサプリメントの解説を医学書院から二年間の時限付き許可を受けてアップした。斎藤部長の許可ももちろん得ている。

 ダイエットとは関係ないが、最近文書をアップしている場所はここしかないので、気が付きやすいように一時的にあたまの部分にリンクを置くことにする。

 健康食品ネットにもビタミンの解説記事がでており、少し前に、こちらではもうサプリメントはやらないと書いたので、言い訳すると、この原稿は斎藤部長が掲載しても良いと筆者のところにわざわざ持ってきて下さったのだ。それから少し時間がかかってしまったのは、ワープロ原稿と印刷版の校正をする時間がなかったためである。

2003年06月14日

野菜の機能性の報告書



 全国野菜需給調整機構のサイト野菜を見直そうというページがあり、その中に梅垣先生と池上先生(前食品科学部長)が書かれた野菜の機能性に関する報告書を見つけた。これはちゃんとワープロからpdfを作ったものだ。というのは、リンクDEダイエットにもリンクのある、梅垣先生の別の野菜に関する報告書(農水のサイトにある)は、スキャン画像をpdfにしたもので、激重なのである。この別の報告書は、いずれワープロからpdfを作りなおしてアップする予定であるが、ひょっとして、今回のやつだけで良いかもしれない(内容を見ていないので今は判断できない)。


ビタミン剤はただ効かないってだけじゃない

 Lancetの6月14日号に載った論文によると、ビタミンEのサプリメントは効かないらしい。正確にはビタミンE剤を飲んでも寿命は延びないようだ。

 おまけに、β‐カロテンのサプリメントは効かないどころか、逆に寿命を短くするという。ほんのわずかだが有意に、だって。多分喫煙者にβ‐カロテンが有害だという研究結果が出たころから予想はされていたんだろうけれど、これって結構衝撃的じゃないか?

 ダイエット注意報の次回の論説はこの問題に焦点をあてることにしよう。

2003年06月15日

葉酸は口唇口蓋裂も予防



 BBCの記事によれば、妊娠中の葉酸サプリメントの摂取が口唇口蓋裂のリスクを低下させるという。葉酸といえば、二分脊椎症や脳の損傷に始まって、ダウン症白血病にも効果があることが最近明らかになったばかりだ。今回の発表で、妊娠可能期にある女性が葉酸のサプリメントを飲む重要性がさらに高まったといえるかもしれない。


 ただし、この研究はイギリスのものであり、以前の研究もそうだが、日本人に葉酸のサプリメントが効果的であったという研究は存在しなかったはずだ。そもそもイギリスとは異なり、日本では二分脊椎症の発生頻度はかなり低いはずで、ひょっとしたらそれは日本人が充分な葉酸を食事から摂取していることのあらわれなのかもしれないのである。


 だが、日本人に関しては充分な調査研究が行われているわけではないので、誰にも日本では葉酸のサプリメントを飲む必要がないとはいえない。幸いなことに、葉酸は少しぐらい多く飲んでも問題がないので、欧米の研究結果を受けて、サプリメントを推奨することになったということだろう(追記参照)。


 この研究は、ロンドンにある小児健康研究所のウィンター教授らによって行われ、医療遺伝学雑誌に発表された。


(追記)


 厚生労働省サイトにある「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」という資料を見ると、先天異常の発生リスクの低減に関する検討会が平成12年12月に出した「神経管閉鎖障害の発症リスクの低減に関する報告書」の「3.我が国における葉酸摂取による神経管閉鎖障害の発症リスクの低減の可能性について」のところに、欧米とは状況が違うかもしれないことが記述されたあとに、を示して、葉酸サプリメントを推奨することによって現在よりさらに発生率を低減させられる可能性に言及している。この図中の回帰線はちょっとおかしい気もするが(発生が0人でもなお16.7%の低減が見込まれてしまう)、言わんとしていることは明らかである。日本人にも効果があるということだ。


2003年07月01日

ビタミンCは葉酸の排泄を高める?



 日本語の健康食品サイトのいくつかで、ビタミンCを1日2グラム以上服用する人は、葉酸がビタミンCと一緒に排泄されてしまうので、普通よりも多めに葉酸を摂取しなければならないと、書かれてあります。


 このことで質問を受けて、文献を捜してみたのですが、どうしても見つかりませんでした。もし事実なら、サプリメント大国のアメリカで葉酸摂取の勧告が作成された時に、一言も触れられていないのが不思議です。変わるけれども有意には変わらないので触れていないだけかもしれないので、文献が見つからない状態では、ただのでたらめなのか誇大広告なのか区別がつきませんでした。


 結局まだ文献は見つけることができないでいるのですが、ひとつだけはっきりしたのは、英語のサイトでは、健康食品の販売サイトを含めて、そんな事実は一切書かれていないということです。


 ということは、恐らく日本か中国か、いずれにせよ、欧米の文化圏とは異なる文化圏での研究成果あるいは伝承によるものということでしょうか。


 まさか、蓚酸を葉酸と見間違えた(あるいは本字、異字と思った)わけではないでしょうが。


2003年08月02日

ママ、茶髪に生んでね!

 マウスを用いたDuke大学の新しい研究によれば、vitamin B12, folic acid, choline and betaineつまりビタミンB12、葉酸、コリン、ベタインの投与しだいで、胎仔の体毛の色を変えることができるのだそうだ。

 これは、食事中の色素がどうこうという問題ではなくて、ビタミンB12などが遺伝子の発現を調節する仕組みにあるようだ。もちろんそういう認識は従来からあり、だからこそ奇形を防ぐために葉酸の摂取が推奨されたり、同じ理由でビタミンAの摂り過ぎが警戒されていたわけだが、赤ちゃんの色が変るという劇的な変化は、単純で視覚に訴えるものがあり、かつ誰にでもできる技術ではない(もちろんこれが論文のポイントだろう)ので、母親の食事が児に与える影響を示したものの古典的な例になる可能性もあるんじゃないだろうか?

 まだ論文を見ていないので詳しいことはわからないが、これはぜひ読まなければと、思う。

2003年09月28日

CLAは身体に悪い?



 共役リノール酸(CLA)はダイエットのクスリとして注目されていた時期もありましたが、摂取しすぎると耐糖能異常や糖尿病になりやすくなるらしいことが、ヒトと動物の両方で明らかになったため、現在では真面目な研究者であれば、決して推薦しないはずです。


 もし、専門家に勧められたら、逆にその専門家に飲むように勧めるべきです。彼(女)は多分、自分はちょっと、といってもう勧めないでしょう。自分でも飲んでいると答えるようなら、その勇気を褒め称えてあげましょう。


2003年10月20日

ホメオパシーと漢方?



 Yahoo!フランスのニュースによると、フランスのホメオパシー療法家は、日本への浸透を画策しているらしい(ぜんぜん違うかもしれない。フランス語はむずかしい)。


 日本では7世紀に半島から渡ってきた漢方を使っているが、これはまさに、ホメオパシーでいう植物療法そのものなのだそうだ。まあ、それはそうかもしれないが、薄めれば薄めるほど効果が増す薬は、単純に化学の原理に反しているので、日本で広まらない理由に学歴社会を挙げてもいいと思うくらいだけれど、宗教的な一面もあるので、漢方は偉大なり、あなたの漢方を試してはいけない、ということにしておきます(意味不明)。


2003年11月03日

馬兜鈴酸中藥



台湾厚生省は、馬兜鈴酸中藥を含む漢方薬に腎臓毒性及び発がん性があるとして、全面的に発売禁止にしたもよう。元記事「毒害不要來 衛署緊急決定含馬兜鈴酸中藥及製劑全面禁用」はこちら。日本語機械翻訳版はこちら


2003年11月11日

イチョウ葉エキスで記憶改善

 学会発表では、よくあるんですが。

2003年11月16日

大豆サプリの副作用



 英国ニュー・サイエンティスト誌サイトの14日付のニュースによると、大豆のサプリメントには女性の性欲を減退させるという副作用があるという。


 ネズミでの実験だが、最大70%も減退させるというのだからただ事ではない。これも学会発表だ。動物実験の学会発表ほど、慎重に聞いておかなければならないものはない。


 でも、ひょっとして、これぞ大和撫子の秘密だったりして。:)


2004年01月02日

アミノ・サプリは効果なし



 ユーレカアラートの年末の記事によると、グルタミン・サプリメントは筋肉を維持する効果は(少なくとも短期的には)ないという。出典は『スポーツ科学医学雑誌』12月号の論文。


2004年01月04日

新生児の黄疸に漢方!

 BBCのニュースユーレカアラートの記事によれば、黄疸の治療に中国のお茶Yin Zhi Huang (ああっ、漢字がわからない!)が効果があることがわかった。臨床研究雑誌(J.Clin.Invest)の1月2日号の論文だそうだ。いまなら(いまだけ?)全文のPDFファイルが読める。

 黄疸の原因は、ヘモグロビンが変性してできる胆汁の成分ビリルビンの代謝が肝臓で正常に行われないで、血液中にあふれてくることにある。論文によれば、Yin Zhi Huangはアジアでは既に黄疸の治療に使われているそうで、肝臓によるビリルビンのクリアランスを促進する効果がある。この論文では、肝臓のレセプターとYin Zhi Huang中の有効成分を特定したということのようだ。

 エフェドラの禁止騒ぎでも感じたが、マオウ(エフェドラ)はアジアでは(日本でも)れっきとした薬でもともと勝手に売ることはできなかった。今回のYin Zhi Huangもアジアでは既に治療に使われているという。記事の中には、東洋の神秘に西洋科学のメスが、みたいなことを言っているが、単に頭が固いから薬として認識できないだけじゃないのか。

 確かに素晴らしい研究成果なんだけど、ニュースには微妙な視線のズレがあるような気がしてならない。

2004年02月01日

緑茶入り牛乳



 おとなりの国、韓国では、緑茶入りの牛乳が発売されたと報じられている(日訳)


 健康にはいいかもしれないけど、なんのために?


2004年07月14日

やっと公開だよ

 とうとう公開にこぎつけました。「健康食品」の安全性・有効性情報です。午後2時頃からパスワードなしでアクセスできるようになりますので、もうしばらくお待ちください。

 内容はかなり盛りだくさんで、しかも信頼性の高いものばかり。その分ちょっと難しいかもしれませんが。

2004年07月29日

にがり(こみゅーんより転載)

 栄養教育とは直接関係ないけれど、「健康食品」の安全性・有効性情報で話題になっている「にがり」の痩身効果なしという情報ですが、予想されたとおり健康食品の販売会社から抗議が殺到しているようです。

 今回の抗議からは、どうやら、一般の人にとっては、3人の学者が学会で発表していれば、それは充分な根拠なのだということがわかりました。

 研究者(学者)の視点からすれば、たった3人の学者(少ない)が学会でしか発表していない(全く信頼性なし)ものは、なにも証明されていないに等しいのですが。

 販売会社にとっては死活問題かもしれないし、本気で信じているのかもしれませんが、彼らはまず、東方の三賢人(確かな根拠があると主張する3人の学者)に聞いてみるべきでしょう。

 もし聞いてもしかたないくらい無知(専門教育を受けてないという意味です。バカという意味ではありません)なのであれば、栄養研にクレームをつけても無意味です。簡単に論駁されてしまうでしょう。

 どのにがり製品で検討したのかと会社の人は仰るようですが、製品ごとにことなると考えているのであれば、それは、「にがり」に効果がないことを認めていることになります。他社の製品には不純物が多いとか、いろいろ主張されているようですが、にがりの効能に関する「研究」は、そういうさまざまな会社の製品を用いて行われているのではないでしょうか? 学会発表でもとりあえず確たる証拠と認めると仮定しても、もし製品ごとのばらつきが大きいのなら、学者の研究で用いられた製品以外の製品は、結局効能を主張できないことになってしまいます。

 ところで、今回の栄養研の発表では、体重が減ることはありえると言っているのに気づいたでしょうか? タイトルには「痩身効果」なしと書いてありますが、下痢や軟便によって身体から水分が失われることで見かけ上体重が減ることはあると言っています。

 でも、必要な栄養素の吸収を阻害することになるので、止めたほうがいいと主張しているわけです。

 日本人の複数の研究者の方々が、にがりの痩身効果について研究していることもこの文章の作者は承知していると思われます。にがりのメカニズムとして主張されているいくつかの点について調べれば、すぐにそれら先生方に行きつくからです。

 通常、まともなエビデンスがないと研究者が言うとき、それはPubMedで文献が見つからないことを意味しています。それは、例えば中国語や日本語で書かれた文献がないという意味ではありません。それらの文献が嘘をついているといっているわけでもありません。

 簡単なことなのですが、よほど偏屈な学者でないかぎり、論文はできれば英語で発表したいと思います。したがって、もし効果がすばらしいものであれば、英語で発表したいと思うのは当然ですし、だれもがそうするように勧めるでしょう。

 では、もしにがりの英語文献があまり存在しないとしたら、それは何を意味するのでしょうか?

 真実は知りません。でも学会でふつうに考えるのは、英語の文献が存在しないならば、エビデンスが希薄なのだということです。それは効果がありえないといっているわけではないのですが、そこのところの解釈が一般の人と研究者で大きく異なるようです。

 研究者として、英語の文献の欠如は、1)いいかげんなもので実際エビデンスがないから、2)研究している人が英語を書けないから、3)国粋主義者なので英語では発表しないから、のどれかだと考えます。3)は私が知っている範囲ではひとりも知りませんし、そんなことを言っていたら博士号も取れないので、まずありえないでしょう。

 とすると、1か2ですが、英語の翻訳サービスも今はありますし、とにかく英語で書かない研究者は、中世ヨーロッパでラテン語で書かない研究者と同じで、無視されたとしても文句は言えません。

 学会で発表してると抗議するかもしれませんが、そんなことをまじめに主張できること自体が恥ずかしいことなのです。

 そうは言っても、上記のことが、にがりに効果が絶対に存在しないという証拠にならないことを認識することが重要です。

 健康食品会社の人はもしかしたら認識しているけれど、購買層が絶対に認識しないからクレームをつけてくるのでしょう。そう思いたい。

 その認識が欠如しているとしたら、健康食品を扱うのはやめたほうがいいのではないでしょうか? もちろん誰でも何を売っても法的な問題はありません。でも道義的な問題がないとはいえないでしょう。

 「わたしは一週間で2キロやせました。これをどう説明しますか」というクレームがついたとして、その「わたし」さんの元の体重は書かれていない、アルコールを断ったというけれど、その前後の体重変化も書かれていない。運動が増える状況ではない、食事量は明らかに増えていると言われても、だれも見ていない。まさに、そういう結果報告のことを、エビデンスがないというのです。

 もし初耳なら覚えてほしいと思います。

 一般の書籍では、こんな実例を10か20か集めて、事足れりとしている。学会発表もこのレベルで可能です。もう少し例数を増やせば日本語の論文になります。

 たしかに、例数をはるかに増やせば、こんないいかげんな報告でも英語の論文になるでしょう。でも、例数を増やすと、いいかげんな結果ではきちんとまとめられないことが多いのです。そのために英語の論文にならない。

 正直なはなし、こんな説明を毎回くりかえすのはうんざりかもしれません(今回は私は当事者ではないけど)。

 高校の課程で、こういう研究のことを教えればいいんですね。

2004年10月05日

ハーブで頭を賦活化?



 サラシナショウマ、アカツメクサのようなハーブで、閉経期女性の記憶力低下を防止できるかという記事がユリイカアラートに掲載されている。米国イリノイ大学シカゴ校の研究だそうだ。


2004年10月20日

タイムリーな栄養補給

デジタル朝鮮日報の記事「朝良い食べ物夕方には毒になれる(日訳) 」によれば、時間帯によって体が必要とする栄養は異なるので、いつでも何でも食べればよいというものではないという。

ヨーロッパ老化防止学会設立者のフランスのクロス ショサル博士は時間帯別に区別された栄養素を供給する‘適時栄養(Timely Nutrition)プログラム’の開発者である。 現代人の生活パターンと栄養状態などを分析、朝食・昼食・おやつ・夕食など一日4回の食事に必要な栄養素と献立を提供している。 老化防止クリニック「ラ クリニク ドゥ パリ」韓国支社の招請で訪韓した博士は韓国支社と共同でいくつかの献立を推薦した。

(以下記事には献立が掲載されているが、イメージなので翻訳されずわたしには判読不能)

読み物としてはとても楽しそうだ。

2004年10月23日

かっけ

 脚気の栄養説は、いまではだれもが結論を知っているから、陸軍軍医総監森林太郎を笑えるけど、海軍軍医高木兼寛のやりかたは、アガリクスが有効だと言う少数を対象にした結果が得られたので、理屈はともかくやってみようというのとあまり違わないかもしれない。

 もっと端的に、にがりに置き換えてみてもいい。米ぬか同様、食品加工の残り物であり、通常そのまま食べることがないという点もそっくりだ(ただし高木自身は米ぬかを食べろとは言ってなかったはず)。

 けれども、重要なことは、高木も森も、人間(軍人)を対象にした調査研究を行って様々な見地から議論しているということだ。効果があるという主張をするのも、それを支持するのも個人の自由なのだとはいっても、科学的検証に耐えない証明しか提出できない状態で、そのこと(提出できないでいるということ)を指摘した人間に、あんまりじゃないか、と、(その人間のいないところで)拡声器を使って発言したというのがもし事実なら、ちょっと情けなくはないだろうか? ふだんTVで細切れに効能を指摘し、動物実験で傍証を示し、それでたいていの人は納得するかもしれないが、TV局に協力するなら、せめて100人くらいの対象者を集めて、RCTを行って見せたら、もういまのような中途半端な状態は解消されるし、うまくいけば本当の大発見者ということになるだろう。

 第二の高木たちが、そんな簡単なことをやらずにいるのは、奇跡は決して起こらないことを、誰よりもよくご存知だからではないのだろうか?

 もっとも、例のにがりの記事も、脂肪吸収の記事も、研究者以外への説明としてはちょっと不親切な気がする。9つの「健康食品」を実験に用いたということで、その9つの具体的な商品名を知りたがる人がとても多いらしい。

 でも、あの記事が意味しているのは、「脂肪吸収をうたった健康食品は(どれも)効かない」ということである。たまたま実験されてしまった商品名を公表することは、かえって間違った結果を招くことになってしまうだろう。脂肪吸収を宣伝している商品は、とりあえずどれも誇大広告の疑いがあるということなのであり、どの商品がよくてどれが悪いというレベルではないのだ。だから、当然そのような広告をした商品やサイトすべてが規制の対象になるはずである。

 にがりは製品間のばらつきが極めて大きいというが、「どんな」にがりでもダイエット効果を証明できたひとがいないのなら、これも別に品質の問題ではない。どの商品をさしているのか聞きたがる人がこちらにもいるらしいが、記事の本質はそういうことではないと思う。

 およそノーベル賞を二回も受賞するような先生の言うことなら真実だろうと信じて、ビタミンCを1日25グラム飲むのは個人の自由であるが、だれかが、そんなことをしてもがんも風邪も予防できないと指摘したとき、結局その真偽のよりどころになるのは論文以外にはない。

 というのは、人間には直感というやつがあり、それがしばしば大きな進歩を促すという事実を考えれば、きわめて明晰な頭脳といっていいノーベル賞受賞者の一言は、やはりないがしろにはできない。でもそれが正しいか間違っているかはある程度客観的に判断できる。それがつまり論文の批判的な吟味ということである。

 平成の高木兼寛たろうとするほどの人ならば、せめてヒト介入試験で確固たる証拠を得てから発言するべきだ。それができないのであれば、まずノーベル賞をふたつほどもらってみるのが栄光への近道ではないだろうか?

続かっけ

 高木の伝記作者でさえ、高木のデータには、弟子達が彼を恐れて実際よりもきれいに修正した部分がないとは言いきれないことを認めている。

 高木の最初に立てた仮説は明らかに間違っており、ビタミンという概念はまだどこにも存在しなかったのだから、実験があるものはうまくいき、別のあるものが失敗するのは当然のことだった。

 これに、森がドイツでコッホに師事したこともあるという事実、また彼自身、兵食の問題で、もっぱらカロリー摂取と健康の観点から白米の利点を認める結果を得ていたことなどを考えると、森がそれほどわからずやの石頭だったとはとても思えない。

 高木の初期の結果は、食事とかっけの因果関係を示唆するものだったはずで、それだけなら細菌が原因であっても少しもおかしくないように思える(論文を直接見ていないので本当にそうかどうかは今は判断できない)。わたしが、高木の伝記を読んだ限りでは、彼自身、白米に毒が入っていると考えていたようであり、それならば毒を細菌に置き換えても、仮説としては成り立つ。肉や玄米には毒を中和する作用があると考えたのだって、それらの中に、抗菌物質が入っているということで説明がつく。

 なんでこんなことを書くのかというと、こういう経過は後知恵で修飾されている部分が大きいとしても、いろいろなことを示唆してくれると思うからである。

 昨今の「健康食品」現象との最大の違いは、いうまでもなくキャスティングである。森と高木は軍医総監という、いまの防衛医科大学長よりさらに上に位置し、ドイツやイギリスに何年も留学したエリート(高木はいわゆるエリートではなかったかもしれないが)であり、極端なたとえだが、利根川進先生と田中耕一先生が喧嘩しているようなものなのだ。

 つぎに違うのは、人間の食事を扱っているはずなのに、なぜか、昨今の現象にはマウスやラットしか登場しないということだ。TVで見る限り、実際に試してみたい人間はいくらでもいるというのに、なんで人間を対象にした実験(TV番組だけでは例数が少なすぎる)が報告されないのか。

 理由は明らかだと思う。だれだって研究者であるからには、新奇な事実を報告して有名になりたい(有名にはなりたくないかもしれないが)。だから、にがりで減量しようという試みは全国で研究が行われているはずである。これだけのブームなのにだれもきちんと論文にしていないのだ。一発当てるには最適の標的ではないか。

 にもかかわらず、論文が出ない、とすれば、結論はひとつ、効果はでないのである。

 それは真実だろうか? 真実を明らかにするのは、(実験)事実だけではないのだらろうか?

 わたしの論点の不備(年を取ることの欠点は不備が美徳になってしまうことだ)をついてくれることを期待しているのですけれど。

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